デュピクセント®とは?

デュピクセント®(デュピルマブ)とは、塗り薬や飲み薬の治療で効果が不十分な中等度から重症のアトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因になっている「IL-4」と「IL-13」というタンパク質(サイトカイン)の働きを直接抑えることで、皮膚の炎症反応を抑制する生物学的製剤です。
2018年4月から国内での使用が開始され2023年から外来でも使用できるようになりました。
炎症反応を抑えることによって、かゆみなどの症状や、皮疹などの皮膚症状を改善します。
生物学的製剤とは?
化学的に合成した薬ではなく、バイオテクノロジーを用いて作られる薬で、生体が作る抗体(たんぱく質)を人工的に作って、薬として使用した新しいタイプの薬のことです。
メカニズム
アトピー性皮膚炎は、「かゆみが良くなったり悪くなったりを繰り返す湿疹で、強いかゆみを伴うのが特徴的な皮膚の病気」で乳幼児では2ヶ月以上、それ以外では6か月以上症状が続くことが多いです。
アトピー性皮膚炎の皮膚の内部では、皮膚のTh2細胞から産生される、Il4やIl13が炎症やかゆみを引き起こしていますが、デュピクセント®はこの、Th2から生成されるIL4とIL13というサイトカインの働きを抑えることによって効果を発現します。

治療の対象となる方
アトピー性皮膚炎の方
生後6か月以上で、ステロイド外用薬、プロトピック軟膏、コレクチム軟膏、モイゼルト軟膏などの抗炎症薬を一定期間使っても改善しない方
※なお、デュピクセント®を投与中も原則として外用薬は継続が必要です。
結節性痒疹の方
15歳以上でステロイド外用剤などによる治療をしても、痒疹結節を主体とする発疹が多発して、複数の部位に及ぶ方
特発性の慢性蕁麻疹の方
12歳以上で抗ヒスタミン薬を一定期間投与しても十分な効果が得られない方
使用できない方
- デュピクセント®に過敏症がある方
- 寄生虫に感染している方
(デュピクセント®は寄生虫感染に対する防御機能に関わってるIL4/IL13の働きを抑えるので、寄生虫に感染している方はデュピクセントの使用前に寄生虫感染の治療を行う必要があります。) - 妊婦や妊娠してる可能性のある方、授乳中の方
- 生ワクチンを接種する予定のある方
(生ワクチンを接種した後は、4週間以上経過してからデュピクセント®を開始できます。一方、デュピクセント®を投与した後に生ワクチンを接種する場合は、少なくとも3ヶ月あけてから接種してください。)
デュピクセント®のメリット
- 通院にともなう時間的な制約や負担を軽減できる
- 高額療養費制度で自己負担額を減額できる(※所得によります)
- 外用薬を塗る量や手間を少なくすることができる
- ステロイド外用剤の強さ(ランク)を下げることが出来るのでステロイドの副作用のリスクを減らせる。
- 皮膚症状をより改善させ、生活の質を向上させることができる
治療の流れ
デュピクセント®をご希望の方
デュピクセント®は、どなたでもすぐに投与できる治療ではありません。
投与を開始するには、医師による診察と検査が必要です。
まずは医師が、現在の症状やこれまでの治療経過、ご本人のご希望(治療期間や費用など)を丁寧にお伺いし、治療方針についてご説明いたします(初回指導)。
その後、デュピクセント®による治療を進めるかどうかは、ご納得いただいた上でご判断いただけます。
初回時にお渡しするパンフレットには、医療費助成制度についても記載があります。
自己注射をご選択された場合、高額療養費制度の対象となる可能性がございます。
また、お子さまについては医療費助成制度をご利用いただけます。
お薬の処方と注射の実施(2回目指導)
後日、再度ご来院いただき、デュピクセント®をご希望される場合には、お薬の処方を行います。
★2回目の指導日に限り、午前・午後ともに診察終了時間の1時間前までにご来院ください。なお、土曜日は対応できかねますのでご了承ください。
処方箋を受け取り、薬局でお薬を受け取った後は、再度クリニックへお戻りいただき、注射の説明および初回投与を実施いたします。
※当院では通院による注射は行っておりません。初回投与の指導後は、ご自宅にて自己注射を継続していただきます。
※すでに他院にてデュピクセント®の自己注射を開始されている方につきましては、診察時にご状況をお伺いし、医師の判断により問題がない場合には、初診時から処方が可能です。
紹介状などをお持ちいただけますと、よりスムーズに対応可能です。
デュピクセント®の投与スケジュール
投与スケジュールは、適応疾患・年齢・体重によって異なります。
成人(15歳以上)

初回投与時に2本を皮下注射します。2回目以降は、2週間に1本皮下注射を行います。
小児(生後6ヶ月以上15歳未満)
60kg以上の場合

初回投与時に2本を皮下注射します。2回目以降は、2週間に1本皮下注射を行います。
30kg~60kg未満の場合

初回投与時に2本を皮下注射します。2回目以降は、2週間に1本皮下注射を行います。
15kg~30kg未満の場合

初回投与時に1本を皮下注射します。2回目以降は、4週間に1本皮下注射を行います。
5kg~15kg未満の場合

初回投与時に1本を皮下注射します。2回目以降は、4週間に1本皮下注射を行います。
デュピクセント®の副作用
デュピクセント®は、重篤な副作用の報告が少なく、比較的安全に使用できる薬剤です。しかし、まれに以下のような副作用が現れることがあります。症状に気づかれた際は、速やかに担当医師へご相談ください。
- 注射した部位(お腹、腕、太ももなど)に発赤、腫れ、かゆみ、痛みが生じることがあります。
- 比較的多くみられる副作用として、結膜炎が出ることがあります。必要に応じて眼科の受診をお願いしております。
- 顔の赤みが残ることがあります。
- 比較的まれな副作用として、めまい、ふらつき、立ちくらみ・手足のしびれ・嘔吐・発疹・むくみ・発熱、息切れ・腹痛・呼吸時の「ゼーゼー」という音、呼吸困難が起こることがあります。
これらの症状は起こる確率は低いですが、「アナフィラキシー反応による症状」もしくは「好酸球数の増加による症状」と言われており、注意が必要な症状です。お気付きの際は速やかに担当の医師へご相談ください。
投与の仕方については、以下のページもご確認ください。(別サイトが開きます。)
デュピクセント®ホームページ|ご自身で注射する場合
デュピクセント®の料金

※令和6年11⽉1日時点のデュピクセント®の薬価をもとに計算しています。
高額療養費について
高額療養費制度については、以下のページをご確認ください。(別サイトが開きます。)
デュピクセント®ホームページ|デュピクセント®の薬剤費と医療費助成制度について
デュピクセント®相談室
より詳細な内容を確認されたい場合は、デュピクセント®相談室までお問い合わせください。
お電話はこちら(デュピクセント®相談室):0120-50-4970
操作方法に関するご質問:24時間365日受付
医療費助成制度について:平日 9:00〜17:00 受付
よくある質問
Q:デュピクセント®はどのくらい続ける必要がありますか?
現在のところ、デュピクセント®をいつまで使用すべきかについて明確な基準はありません。
一般的には6ヶ月を目安に治療効果を評価し、状態が安定していれば一旦デュピクセント®の使用を中止することも検討します。中止の際は、患者さんと相談のうえで決定します。
ただし、デュピクセント®をやめた後も、外用薬(塗り薬)の継続が必要です。これは、急に治療をやめると「リバウンド(再燃)」により症状が悪化する可能性があるためです。
もし、デュピクセント®を中止した後に塗り薬だけでは症状のコントロールが難しくなった場合は、再びデュピクセント®を使用することも可能です。
Q:何回くらい治療すれば、効果が実感できますか?
効果のあらわれ方には個人差がありますが、治療を始めてから約2週間ほどで改善が見られることが多いです。
特に、3ヶ月が経過する頃には、多くの患者さんで「かゆみ」や「赤み」などの症状に明らかな改善が認められています。
Q:治療は受診した当日から開始できますか?
初回の受診では、これまでの治療歴や症状について詳しくお伺いし、皮膚の状態を評価(スコア化)する必要があります。
また、デュピクセント®は冷蔵保管された薬剤を室温に45分以上置いてから使用する必要があるため、初診当日の注射は行えません。
実際の注射は、2回目の受診時からとなります。
※注射を行う日(=2回目の受診時)は、午前・午後ともに「診察終了時間の1時間前まで」にお越しください。なお、土曜日は注射を実施しておりませんのでご了承ください。
Q:デュピクセント®の費用は、病院やクリニックによって異なりますか?
デュピクセント®は保険適用のお薬です。そのため、費用は全国どの医療機関でも同じです。
Q:デュピクセント®の自宅での保管方法に注意点はありますか?
デュピクセント®は、必ず冷蔵で保管してください。自己注射を行う際は、箱から注射器を取り出し、平らな場所に置いて45分以上室温に戻してから投与してください。